Web改善の必要性を数字が苦手な上司に説明するとき、わたしの場合は、数字を増やすより、上司がふだん使っている言葉に置き換えて、社内で起きた1件の話を添えるほうが通りました。

数字が苦手な上司、と書きましたが、わたしの上司は数字そのものが苦手なわけではありません。
工場の生産管理から総務に移ってきた部長で、納期や不良の件数には、わたしよりずっと詳しい人です。

苦手なのは、Webの数字でした。
「ユーザー」や「表示回数」と言われても、それが多いのか少ないのか、会社にとって何を意味するのかが分からない。
考えてみれば、当たり前のことでした。

説明がうまくいかなかった頃と、通るようになってからで何を変えたのかを、順番に書いていきます。

GA4の画面をそのまま見せるのをやめる

最初の失敗から書きます。

GA4(サイトに来た人の数や、よく見られたページが分かるGoogleの無料ツール)の画面を印刷して、上司の机に持っていきました。
「ユーザー」の欄に4桁の数字が出ている画面です。

上司の返事は「で、これは多いの?少ないの?」でした。

わたしは答えられませんでした。
自分でも、多いのか少ないのか分かっていなかったからです。

その紙は上司の机の書類に重ねられたまま、話はそれきりになりました。
分かっていない人が持ってきた数字を、分かれというほうが無理な話です。

GA4のどの画面を見ればいいかは、GA4を開いて最初に見る画面のことを書いた記事にまとめています。
ただ、見る画面が分かってからも、それをそのまま上司に見せるのはやめました。

GA4の言葉は、Web担当の言葉です。
上司の言葉ではありません。

上司がふだん見ている数字に置き換える

上司が毎朝見ているのは、受注の件数と、納期に遅れそうな案件と、部署ごとの残業時間です。
工場の会社なので、どれも「件」と「時間」で話します。

そこで、Webの数字を「件」と「時間」に置き換えて話すようにしました。

Webの言葉上司に話すときの言い方
ユーザー数が先月より減った先月より、サイトを見に来た人が少なかった
採用ページの表示回数が多い応募を考えている人が、採用ページを何度も開いている
フォームからの送信数サイト経由の問い合わせが、今月何件あったか
更新作業の工数この作業で、わたしの月◯時間が埋まっている

一番伝わったのは、問い合わせの件数でした。
件数なら、上司は受注の件数と同じ感覚で見られます。
問い合わせフォームから届いたメールを数えるだけなので、GA4を開く必要もありません。

時間に置き換える話は、ひとり体制でどこまで自分でやるかを書いた記事でも触れました。
「忙しいです」ではなく「この作業に月◯時間かかっています」と言う、という話です。

改善の必要性を説明するときも、同じ置き換えがそのまま使えました。

社内で起きた1件の話を先に出す

数字よりも話が進んだのは、社内で実際に起きた1件の話です。

採用ページの改善を相談したとき、わたしは数字の前に、人事の担当者から聞いた話をしました。
面接に来た人が「採用ページの募集要項と求人サイトの条件が違っていたので、どちらが正しいのか聞きたかった」と言っていた、という話です。

上司は「それはまずいな」と言いました。
採用ページの表示回数を見せたときには、出てこなかった反応です。

1件の話なら、上司はその場面を頭に思い浮かべられます。
数字だけでは、思い浮かべる手がかりになりません。

わたしがいま、こうした話を集めている先です。

  • 人事の担当者。面接に来た人が、サイトの何を見て来たか
  • 営業。取引先から、サイトについて何か言われたことがあるか
  • 電話を受けている人。サイトに書いてあることを、わざわざ電話で聞かれていないか
  • 経理。Web関連で毎月払っているもので、使っていないものはないか

総務にいると、電話の中身は自然と耳に入ってきます。
「ホームページに載っている住所で合っていますか」という電話が月に何本かあって、これも話の材料になりました。

聞いた話は、日付と、誰から聞いたかを付けて、表計算ソフトに1行ずつ書いています。
多い月で2〜3件、何もない月もあります。

上司に話すときは、言った人の名前を出していいか、先に本人に確認しています。
人事の担当者には「名前は出さないで、人事から聞いたことにして」と言われたので、そうしました。

数字は2つまでにして、比べる相手をつける

数字をまったく出さないわけではありません。
1件の話のあとに、それが1件だけの話ではないと伝えるために使います。

ただ、出す数字は2つまでにしました。
たくさん並べると、上司はどれを見ればいいのか分からなくなります。

そして、数字には必ず比べる相手をつけています。

  • 先月や、去年の同じ月と比べる
  • 社内のほかのページと比べる

採用ページの話のときに出したのは、ページの見られた順で、採用情報のページが上から2番目にあって、製品のページより上だった、ということでした。
何回見られたかという数字は言わずに、順番だけを伝えています。

社長に伝えたときも、これで驚いてもらえました。
製品より採用のほうが見られている、という比べ方なら、Webに詳しくなくても意味が分かります。

月に1回、上司に数字を報告する資料に何を載せるかは、話が別になるので、また別の記事で書きます。

やらなかったときに困ることを書く

上司が判断するときにいつも聞いてくるのは、「やらなかったら、どうなるの」です。
工場の設備を入れ替えるかどうかも、同じ聞き方で決めているそうです。

最初のうち、わたしは、やったらどうよくなるかばかり話していました。
「見やすくなります」「応募が増えるかもしれません」。
どれも「かもしれない」なので、上司も決めようがありません。

やらなかったときに困ることは、いま実際に起きていることなので、言い切れます。

  • 募集要項が古いままだと、応募者から確認の電話が来て、人事がそのたびに説明している
  • 住所を確かめる電話が月に何本かあって、総務がその対応をしている
  • もう作っていない製品がページに残っていて、営業が取引先から聞かれたことがある

どれも、いま誰かの時間が取られている話です。
「直せば、この時間がなくなります」と言えるようになってから、上司が決めるまでが早くなりました。

上司が社長に話せる形にして渡す

上司がOKを出しても、最後に決めるのは社長、ということがあります。
わたしの会社では、金額が大きいものはそうです。

そのとき社長に説明するのは、わたしではなく上司です。
上司が自分の言葉で社長に話せないと、そこで止まります。

なので、上司に渡すときは、紙1枚にこれだけ書くようにしました。

  • 社内で起きた1件の話
  • それが1件だけではないと分かる数字(2つまで)
  • やらなかったとき、誰の時間が取られ続けるか
  • いくらかかって、何がなくなるか

採用ページの改修のときに書いた紙は、だいたいこういう中身でした。

  • 面接に来た人から、採用ページと求人サイトの条件が違うと言われた(人事より)
  • 採用ページは、サイトの中で2番目に見られているページ。製品のページより上
  • 直さないと、応募者からの確認の電話に、人事が毎回対応することになる
  • 費用は約30万円。確認の電話と、写真を差し替えるたびの外注の待ち時間がなくなる

Webの言葉は、紙に入れないようにしています。
どうしても入れるときは、すぐ横に言い換えを書きます。

上司からは「これなら社長に持っていける」と言われました。
上司がそのまま社長に話せる形になっていれば、わたしがその場にいなくても話が進みます。

まとめ

数字が苦手な上司に説明するとき、わたしがやったのは、数字を増やすことではなく、上司の言葉に置き換えることでした。
GA4の画面は、自分が見るためのものとして手元に置いておけば十分です。

やることを1つに絞るなら、次に上司に相談するとき、社内で起きた1件の話を1つ持っていくことだと思います。

人事や営業や電話を受けている人に、「サイトのことで何か言われたことはありますか」と聞くだけで、話は集まります。
その1件があれば、数字はあとから添えるくらいでちょうどいいです。